STORY
むか~し、むかし。
ある所に、お花や草木達と仲良しのおばあさんが暮らしていました。
今日は、お日様がまぶしいぐらいの良いお天気です。
おばあさんのお部屋からは、パンの芳ばしい(こうばしい)香りが漂ってきています。
ふと、窓に目をやると、風さんと小鳥たち。楽しそうに話しているのが、おばあさんにはわかるようです。「ウフフ、あの子達、何をそんなに楽しそうに話しているんでしょ。少しだけど、聞こえてくるわ、あの子達の弾むような声が。きっといい事があったのね。」と、おばあさんは部屋の小さな窓から目を細めて満足そうに笑っています。
「おばあさん、なぜ耳が遠いのに、私たちの話がわかるのですか?」
小鳥の家族が窓の側まで飛んできて、おばあさんに語りかけます。
おばあさんは、また「ウフフ・・・」と笑いながら元気よく応えます。
地面に墜落しそうになりましたが、地面すれすれで、セーフ!ぐ~~~んと上の方めがけて一直線に飛んだかと思うと、
ありがとう!と、空いっぱいに「弧」をえがいて、飛んでいきました。
おばあさんが、「よっこいしょ」と椅子に座り、ふと壁の時計に目をやると、時計の針は3時の時間をさしています。「ありゃ、まあ、もう3時だよ。」おばあさんは、あわてて立ち上がると、草で編んだかごに、「焼きたてのパン」を入れ、森のほうに、とぽとぽ“と歩いていきました。毎日、3時になると森に暮らす、大きなとかげの「イギーちゃん」におやつのパンをあげにいくのです。
道ばたには、大きなバナナの木があり、とてもおいしそうな香りがしています。おばあさんが、そばを通ると、バナナの木さんが「おばあさん今日もイギーちゃんに、おやつをあげにいくのかい?
イギーちゃんの好物は確かバナナだったよねー。僕の頭に、まっきっ黄のおいしいのが出来てるから、ひと房あげるよ!」と、おばあさんに語りかけます。
でも、おばあさんは、目が悪いのと腰が少し曲がっている為、バナナの木さんが話すまっきっ黄“のバナナが見えません。「困った困った。どこにあるんだろう・・・」と、少し顔を上げてみますが、背が低いので木のてっぺんまでは見えないのです。おばあさんが、おろおろ“していると上の方から、声がしました。
「おばあさん、僕が上から落としてあげるからしっかりと手に持っているパンのかごで受け取ってね!」
お見事! ドスン!と音がして、かごのど真ん中にバナナが入ったのです。
「わたしも、まだまだ若いわい」あっはっはっ!!とおばあさんは得意げに笑っています。
あ~よかった、とバナナの木さんも、胸をなでおろしていました。
おばあさんが無事、森にたどりつくと森に住む妖精たちや動物達がおばあさんを、ほおっては(放っては)おきません。おばあさんは森のみんなの超人気ものなのです。なぜ人気者なのかって・・?? それはね。。。
おばあさんが一生懸命考えた、薬草スープや、お花の貼り薬が、森のみんなの生活にとっても役立っているからです。
うさぎの「ミュウ」は、おなかをこわして顔色が良くありません。おばあさんは、「お鍋の中に川の水を半分、足元の茶色の葉っぱを4枚、緑の草を1枚、1本目の道を左に曲がったところある、小さな木の皮を少々入れ、よーくかき混ぜ、太陽に丸1日当ててごらん。そうして作ったスープをお飲み。」と優しく語りかけます。
すると、どうでしょう!
次の日には、「おばあさん、ありがとう!」とぴょん、ぴょんと元気に飛び跳ねながら、
ミュウが、お礼を言いに来ているではありませんか!
今度は、かえるの「ケロちゃん」と、カメの「ミドリ」さんが、大げんかをしてしまったようです。ケロちゃんが、おばあさんに相談に来ました。「僕、ミドリさんに謝りたいんだけど・・・素直になれないんだ・・」どうやら、ケロちゃんと、ミドリさんはささいなことから、池の縄張り争い“をしてしまい、お互い、暴力をふるってしまったようです。
「池はみんなのものだって、わかっていたんだけど・・・つい。」ケロちゃんが寂しそうにうつむきます。
おや、本当に謝ろうと思っているんだね? それならいい事を教えてあげよう。
おばあさんは、ケロちゃんの頭を優しくなでながら、そっと耳元でささやきます。「森で一番心の美しいノバラさんから、大きな花びらをもらっておいで。小さいのは駄目だよ。必ず大きいのにしておくれよ。あんたの仲直りしたい心が本物なら、大きな花びらをくれるだろうけど、仲直りしたい心が嘘なら、ノバラさんは花びらをくれないよ。」
ケロちゃんは少し考え込んでいる様子でしたが、おばあさんに「さ、勇気を出していっておいで!」と、
背中をポン“とたたかれ元気に森の中をはねていきました。
そうこうするうち、日も暮れて、あたりが薄暗くなってきました。
一番大きなのを口にくわえています。背中に1枚、おなかに1枚。背中とお腹の花びらは紐でくくり付けてありました。
森一番の智恵袋、「カシの木おじさん」が、花びらを運ぶのに苦しそうなケロちゃんの姿を見つけ、花びらがやぶれないように、柔らかい草の紐で結んでくれたのです。
「おあぁさん・・・フガフガ・・・」
そうです。口いっぱいに花びらをくわえているケロちゃんは「おばあさん」と、ちゃんと言えません。そのこっけいな姿を見て森の動物達も大笑い。
「さてっ、と、もう日が暮れるよ、おうちにお帰り。今日はご苦労さん。
花びらを家に持って帰って、お花のエッセンスをあんたとミドリさんの為に作らないとね。」
あ~忙しい、忙しい。と言い残して、おばあさんは、家に帰っていきました。
「仲直りのエッセンス、いつ出来るんだろう・・・僕、ミドリさんと早く仲直りしたいんだけど・・・。」ケロちゃんは少し心配になっていました。
それから・・・2ヶ月がたちましたが、おばあさんの姿を森で、見かけることはありませんでした。「おおとかげのイギーちゃん」も、ケロちゃんとミドリさんの為におやつを我慢することにしていました。
その頃、おばあさんはケロちゃんとミドリさんが仲直り出来るよう、毎日、毎日、寝る間も惜しんで、お花のエッセンスを作っていたのでした。大きな花びらが必要だったのは、作るのが難しく、「何回も何回も失敗してはやり直し。失敗しては、やり直し。」で、とても手間がかかるからです。おばあさんのエプロンは、草やお花のエキスがびっしり“こびりついて、とても汚れていましたが、エプロンからは、とても良い香りが漂っていました
また、真夏の暑い中、1日中外に立ちっぱなしで、がんばっていた為、おばあさんの茶色のエプロンは太陽の光で色が飛び、ほとんど白色になっていました。年齢的にはとても、つらい仕事でしたが、なんとかケロちゃんとミドリさんが仲直り出来るよう、おばあさんは毎日お祈りを捧げながら、お花のエッセンスを作っていたのでした。
「出来た!出来たよ!ケロちゃん!」おばあさんが心の中で叫んだ時には、ケロちゃんと森で別れてから既に2ヶ月半が経っていました。おばあさんは、その夜、夢を見ました。とても素敵な夢でした。ケロちゃんとミドリさんが仲直りして、握手をしている夢でした。
次の朝、おばあさんが起きると、外は素晴らしいお天気です。おばあさんは、「お花のエッセンス」作りで少しやせたようですが、活き活きとした目をして、森へ向かって歩いていました。
おばあさんが森にたどり着くと、ケロちゃんは、おばあさんとは対照的にすこし大きくなっていました。「はい、ケロちゃん、香りを嗅ぐと、とても優しい気持ちになれる、仲直りのエッセンス、約束どおり作ってきたよ。手をお出し。」と、おばあさんが言いました。
あっはっはっ、あ~っはっはっ!
昼寝をしていた、森じゅうの動物達がびっくりして起きるほどの大声で、おばあさんが笑い出しました。ケロちゃんも、目をまん丸にしておばあさんを見ています。
さらに、大きな声でおばあさんがしゃべり出しました。まるで、森じゅうのみんなに話かけるように!「仲直りして、元気がないのかい?? 何を私に遠慮する事があるんだね!!仲直りほど素敵な事がこの世の中にあるのかい?」でも・・・・・・ケロちゃんが再び口ごもると、おばあさんはニッコリ。「わたしゃ、あんたが、ミドリさんと仲直り出来るのを最初から、わかっていたんだよ。仲直りの為に、花びらをあんなに、一所懸命持って帰ってきた、あんただもの・・・」と、おばあさんは言いながら、とても小さなビンに入った、「お花のエッセンス」のふたを開けました。
あんなに仲の悪かった、犬さんと猿さんも、カラスさんと鳩さんも・・・
いいかい、ケロちゃん、これからはこの「お花のエッセンス」を持ってあんたが、森のみんなのケンカを止めておくれよ。わたしゃ、こんな事でみんなのお役に立てるなら、寂しいけれど、もう森に来るのは止めて、家で1つでも多くのエッセンスを死ぬまで作ることにしたいんだよ。「皆への配達は、これからは足の速いオオカミ君に任せることにするか!あたしの遅い足じゃ、何年かかるかわからないからね!」 あっはっはっ!!大声で笑うおばあさんの目には涙がにじんでいました。寂しいけれど、とっても嬉しい。そんな涙でした。
しかし・・・・
時が経ち、傲慢な権力者が森のみんなの生活をおびやかしにやって来ました。そして、「ハーブやお花のエキスを使う人間を悪魔の手先をみなす!」というとんでもない決まりを作ってしまったのです。
それから・・・それから・・・おばあさんは一番に権力者に捕まってしまいました。
おばあさんが、森の自然と動物達、そして森の周りに暮らす人々を
【自然のリズム、自然の智恵。自然から学んだ勇気】で守っていたからです。
それが、権力者の目には「怪しい魔術を使う悪魔の老婆」に映ったのです。
そして・・・そして・・・・
おばあさんはとうとう「魔女」として、火あぶりの刑にされてしまいました。
でも、おばあさんの「心」はいつまでも生き続けました。ケロちゃん、おおとかげのイギーちゃん、かめの「ミドリ」さん、森のすべての動物達の心の中に・・・・・そして・・・・何百年も時が経ち、おばあさんの娘さんのお孫さん、そのお孫さんのひ孫さんの娘さんが、20歳になったとき、まだ、あどけない感じの「子供のオオカミ」が1冊の本を運んできました。
そう、その狼くんの何代も前に生まれたオオカミの祖先は、火あぶりの刑にされてしまった、
あの、おばあさんの「お花のエッセンス」を、毎日、毎日、足の爪が擦り切れるまで、森の隅々まで運んだオオカミでした。
雨の日も、雪の日も、森が火事に見舞われ、みんなが落ち込んでいる時も、
ひと時も休まず、おばあさんの「心」を届けていたのです・・・
本の表紙に「とても大切なレシピ」と書いてあったので、娘さんは「お料理の本かしら?」と、そのぶ厚い本を開けました。すると、あたたかな人柄を感じさせる文字で紙いっぱいに、「お花の香り」のレシピが書かれていたのです。
ある所に、お花や草木達と仲良しのおばあさんが暮らしていました。
今日は、お日様がまぶしいぐらいの良いお天気です。
おばあさんのお部屋からは、パンの芳ばしい(こうばしい)香りが漂ってきています。
ふと、窓に目をやると、風さんと小鳥たち。楽しそうに話しているのが、おばあさんにはわかるようです。「ウフフ、あの子達、何をそんなに楽しそうに話しているんでしょ。少しだけど、聞こえてくるわ、あの子達の弾むような声が。きっといい事があったのね。」と、おばあさんは部屋の小さな窓から目を細めて満足そうに笑っています。
「おばあさん、なぜ耳が遠いのに、私たちの話がわかるのですか?」
小鳥の家族が窓の側まで飛んできて、おばあさんに語りかけます。
おばあさんは、また「ウフフ・・・」と笑いながら元気よく応えます。
「わたしゃ、心で聞いているんだよ!あんたたちの楽しそうな話をね!」小鳥達は、おばあさんのあまりに大きい声にびっくり!
地面に墜落しそうになりましたが、地面すれすれで、セーフ!ぐ~~~んと上の方めがけて一直線に飛んだかと思うと、
ありがとう!と、空いっぱいに「弧」をえがいて、飛んでいきました。
おばあさんが、「よっこいしょ」と椅子に座り、ふと壁の時計に目をやると、時計の針は3時の時間をさしています。「ありゃ、まあ、もう3時だよ。」おばあさんは、あわてて立ち上がると、草で編んだかごに、「焼きたてのパン」を入れ、森のほうに、とぽとぽ“と歩いていきました。毎日、3時になると森に暮らす、大きなとかげの「イギーちゃん」におやつのパンをあげにいくのです。
道ばたには、大きなバナナの木があり、とてもおいしそうな香りがしています。おばあさんが、そばを通ると、バナナの木さんが「おばあさん今日もイギーちゃんに、おやつをあげにいくのかい?
イギーちゃんの好物は確かバナナだったよねー。僕の頭に、まっきっ黄のおいしいのが出来てるから、ひと房あげるよ!」と、おばあさんに語りかけます。
でも、おばあさんは、目が悪いのと腰が少し曲がっている為、バナナの木さんが話すまっきっ黄“のバナナが見えません。「困った困った。どこにあるんだろう・・・」と、少し顔を上げてみますが、背が低いので木のてっぺんまでは見えないのです。おばあさんが、おろおろ“していると上の方から、声がしました。
「おばあさん、僕が上から落としてあげるからしっかりと手に持っているパンのかごで受け取ってね!」
ぴゅーん!とものすごい勢いでバナナがおばあさんめがけて落ちてきます。バナナの木さんも「あっ、しまった・・・こんなにすごい勢いで落ちるなんて・・・おばあさんがケガしたらどうしよう・・」思わず目をふさいでいます。しかし、おばあさんは「ようーし!かわいい、イギーちゃんのおやつの為だ!わたしゃ、ちゃんとかごに入れてみせるよ。」とバナナの真下にしっかり立っています。いつものおばあさんとは全然違います。腰をしゃん“と伸ばして、身構えます。
お見事! ドスン!と音がして、かごのど真ん中にバナナが入ったのです。
「わたしも、まだまだ若いわい」あっはっはっ!!とおばあさんは得意げに笑っています。
あ~よかった、とバナナの木さんも、胸をなでおろしていました。
おばあさんが無事、森にたどりつくと森に住む妖精たちや動物達がおばあさんを、ほおっては(放っては)おきません。おばあさんは森のみんなの超人気ものなのです。なぜ人気者なのかって・・?? それはね。。。
おばあさんが一生懸命考えた、薬草スープや、お花の貼り薬が、森のみんなの生活にとっても役立っているからです。
うさぎの「ミュウ」は、おなかをこわして顔色が良くありません。おばあさんは、「お鍋の中に川の水を半分、足元の茶色の葉っぱを4枚、緑の草を1枚、1本目の道を左に曲がったところある、小さな木の皮を少々入れ、よーくかき混ぜ、太陽に丸1日当ててごらん。そうして作ったスープをお飲み。」と優しく語りかけます。
すると、どうでしょう!
次の日には、「おばあさん、ありがとう!」とぴょん、ぴょんと元気に飛び跳ねながら、
ミュウが、お礼を言いに来ているではありませんか!
今度は、かえるの「ケロちゃん」と、カメの「ミドリ」さんが、大げんかをしてしまったようです。ケロちゃんが、おばあさんに相談に来ました。「僕、ミドリさんに謝りたいんだけど・・・素直になれないんだ・・」どうやら、ケロちゃんと、ミドリさんはささいなことから、池の縄張り争い“をしてしまい、お互い、暴力をふるってしまったようです。
「池はみんなのものだって、わかっていたんだけど・・・つい。」ケロちゃんが寂しそうにうつむきます。
おや、本当に謝ろうと思っているんだね? それならいい事を教えてあげよう。
おばあさんは、ケロちゃんの頭を優しくなでながら、そっと耳元でささやきます。「森で一番心の美しいノバラさんから、大きな花びらをもらっておいで。小さいのは駄目だよ。必ず大きいのにしておくれよ。あんたの仲直りしたい心が本物なら、大きな花びらをくれるだろうけど、仲直りしたい心が嘘なら、ノバラさんは花びらをくれないよ。」
ケロちゃんは少し考え込んでいる様子でしたが、おばあさんに「さ、勇気を出していっておいで!」と、
背中をポン“とたたかれ元気に森の中をはねていきました。
そうこうするうち、日も暮れて、あたりが薄暗くなってきました。
向こうの方から、「はっ、はっ、はっ、」と息の荒い動物が、近づいてきます。どうやら、ケロちゃんは無事、「ノバラ」さんに花びらをもらえたようです。それも、3枚!
あっ!ケロチャンだ!!
一番大きなのを口にくわえています。背中に1枚、おなかに1枚。背中とお腹の花びらは紐でくくり付けてありました。
森一番の智恵袋、「カシの木おじさん」が、花びらを運ぶのに苦しそうなケロちゃんの姿を見つけ、花びらがやぶれないように、柔らかい草の紐で結んでくれたのです。
「おあぁさん・・・フガフガ・・・」
そうです。口いっぱいに花びらをくわえているケロちゃんは「おばあさん」と、ちゃんと言えません。そのこっけいな姿を見て森の動物達も大笑い。
この、花びらでね・・・・・「仲直りのエッセンス」を造るのよ♬エッセンス~~~??ケロちゃんは、おばあさんの口から出た、オシャレな言葉“に戸惑っています。「エッセンスなんて言葉、おばあさんから初めて聞くよなぁー。。」「いつも、わたしゃ、とか。よっこいしょ。ばっかりなのに・・・」首をかしげて、おばあさんを見つめます。
「さてっ、と、もう日が暮れるよ、おうちにお帰り。今日はご苦労さん。
花びらを家に持って帰って、お花のエッセンスをあんたとミドリさんの為に作らないとね。」
あ~忙しい、忙しい。と言い残して、おばあさんは、家に帰っていきました。
「仲直りのエッセンス、いつ出来るんだろう・・・僕、ミドリさんと早く仲直りしたいんだけど・・・。」ケロちゃんは少し心配になっていました。
それから・・・2ヶ月がたちましたが、おばあさんの姿を森で、見かけることはありませんでした。「おおとかげのイギーちゃん」も、ケロちゃんとミドリさんの為におやつを我慢することにしていました。
その頃、おばあさんはケロちゃんとミドリさんが仲直り出来るよう、毎日、毎日、寝る間も惜しんで、お花のエッセンスを作っていたのでした。大きな花びらが必要だったのは、作るのが難しく、「何回も何回も失敗してはやり直し。失敗しては、やり直し。」で、とても手間がかかるからです。おばあさんのエプロンは、草やお花のエキスがびっしり“こびりついて、とても汚れていましたが、エプロンからは、とても良い香りが漂っていました
また、真夏の暑い中、1日中外に立ちっぱなしで、がんばっていた為、おばあさんの茶色のエプロンは太陽の光で色が飛び、ほとんど白色になっていました。年齢的にはとても、つらい仕事でしたが、なんとかケロちゃんとミドリさんが仲直り出来るよう、おばあさんは毎日お祈りを捧げながら、お花のエッセンスを作っていたのでした。
「出来た!出来たよ!ケロちゃん!」おばあさんが心の中で叫んだ時には、ケロちゃんと森で別れてから既に2ヶ月半が経っていました。おばあさんは、その夜、夢を見ました。とても素敵な夢でした。ケロちゃんとミドリさんが仲直りして、握手をしている夢でした。
次の朝、おばあさんが起きると、外は素晴らしいお天気です。おばあさんは、「お花のエッセンス」作りで少しやせたようですが、活き活きとした目をして、森へ向かって歩いていました。
おばあさんが森にたどり着くと、ケロちゃんは、おばあさんとは対照的にすこし大きくなっていました。「はい、ケロちゃん、香りを嗅ぐと、とても優しい気持ちになれる、仲直りのエッセンス、約束どおり作ってきたよ。手をお出し。」と、おばあさんが言いました。
しかし・・・ケロちゃんは「バツの悪そうな顔」をしています。「おや、遠慮してるのかい。いいんだよ」とおばあさんが言うと、ケロちゃんはうつむきながら「違うんだ・・・・実は僕、もうミドリさんと仲直りしちゃったんだ。だから、せっかく仲直りのエッセンスを作ってくれたおばあさんに悪くて・・・」と。
あっはっはっ、あ~っはっはっ!
昼寝をしていた、森じゅうの動物達がびっくりして起きるほどの大声で、おばあさんが笑い出しました。ケロちゃんも、目をまん丸にしておばあさんを見ています。
さらに、大きな声でおばあさんがしゃべり出しました。まるで、森じゅうのみんなに話かけるように!「仲直りして、元気がないのかい?? 何を私に遠慮する事があるんだね!!仲直りほど素敵な事がこの世の中にあるのかい?」でも・・・・・・ケロちゃんが再び口ごもると、おばあさんはニッコリ。「わたしゃ、あんたが、ミドリさんと仲直り出来るのを最初から、わかっていたんだよ。仲直りの為に、花びらをあんなに、一所懸命持って帰ってきた、あんただもの・・・」と、おばあさんは言いながら、とても小さなビンに入った、「お花のエッセンス」のふたを開けました。
するとどうでしょう・・・・・
おばあさんとケロちゃんの周りに、森中の動物達が集まってくるではありませんか。あんなに仲の悪かった、犬さんと猿さんも、カラスさんと鳩さんも・・・
いいかい、ケロちゃん、これからはこの「お花のエッセンス」を持ってあんたが、森のみんなのケンカを止めておくれよ。わたしゃ、こんな事でみんなのお役に立てるなら、寂しいけれど、もう森に来るのは止めて、家で1つでも多くのエッセンスを死ぬまで作ることにしたいんだよ。「皆への配達は、これからは足の速いオオカミ君に任せることにするか!あたしの遅い足じゃ、何年かかるかわからないからね!」 あっはっはっ!!大声で笑うおばあさんの目には涙がにじんでいました。寂しいけれど、とっても嬉しい。そんな涙でした。
しかし・・・・
時が経ち、傲慢な権力者が森のみんなの生活をおびやかしにやって来ました。そして、「ハーブやお花のエキスを使う人間を悪魔の手先をみなす!」というとんでもない決まりを作ってしまったのです。
それから・・・それから・・・おばあさんは一番に権力者に捕まってしまいました。
おばあさんが、森の自然と動物達、そして森の周りに暮らす人々を
【自然のリズム、自然の智恵。自然から学んだ勇気】で守っていたからです。
それが、権力者の目には「怪しい魔術を使う悪魔の老婆」に映ったのです。
そして・・・そして・・・・
おばあさんはとうとう「魔女」として、火あぶりの刑にされてしまいました。
でも、おばあさんの「心」はいつまでも生き続けました。ケロちゃん、おおとかげのイギーちゃん、かめの「ミドリ」さん、森のすべての動物達の心の中に・・・・・そして・・・・何百年も時が経ち、おばあさんの娘さんのお孫さん、そのお孫さんのひ孫さんの娘さんが、20歳になったとき、まだ、あどけない感じの「子供のオオカミ」が1冊の本を運んできました。
そう、その狼くんの何代も前に生まれたオオカミの祖先は、火あぶりの刑にされてしまった、
あの、おばあさんの「お花のエッセンス」を、毎日、毎日、足の爪が擦り切れるまで、森の隅々まで運んだオオカミでした。
雨の日も、雪の日も、森が火事に見舞われ、みんなが落ち込んでいる時も、
ひと時も休まず、おばあさんの「心」を届けていたのです・・・
本の表紙に「とても大切なレシピ」と書いてあったので、娘さんは「お料理の本かしら?」と、そのぶ厚い本を開けました。すると、あたたかな人柄を感じさせる文字で紙いっぱいに、「お花の香り」のレシピが書かれていたのです。